
朝から景気良く雨が降っている。ユースホステルの窓から見える草原と木々の風景は、雨に濡れてしっとりとした落ち着いた雰囲気がある。心静かに眺めていれば癒しある良い風景だ。これから出かけることが無ければであるが・・・
食堂で同宿の人たちと朝食をとる。それぞれこれからどこに向かうか話しながら、TVの天気予報に注目すると北海道は全面的に雨模様だ。
朝食後に部屋に戻り荷物を整理する。この雨の中、すぐに出発する気にはなれないので、一服するために食堂に行くと同宿の人たちが同じ気持ちなのか何人か歓談していた。北海道の警察の取り締まりの話をしている。
北海道での取締りでの注意点をいろいろ聞いて、絶対にスピードを出さないようにしようと思う。ここで違反を検挙されたらせっかくのツーリングが台無しだ。
いつまでもユースホステルにいても仕方ないので、出発の準備をすることにする。荷物をバイクに取り付けるときにも身体にあたる雨が鬱陶しい。
意を決して出発する。慎重に細い道路を曲がりながら、ユースホステルまできた道を戻り国道452号へ。
国道452号から国道274号へ入り帯広方面へ進む。雨の中を走っても景色など目に入らない。山の中を通る道では、転倒を避けるため道路状況を把握することに集中するからだ。もっとも、雨の中では視界が悪くて遠くは霧がかかったようにしか見えない。
山の中ではクルマもスピードを抑え目にして走っている。二輪の自分も当然ゆっくり走る。時間をかけてもたいして距離が進まない。山の中の道を1時間以上走ってそろそろ疲れてきたと思っても、休憩できる場所が見当たらない。
あぁ。これだから雨の中を走るのは嫌なんだ。
苦痛に耐えながら走ってようやく道の駅が見えてきた。立ち寄って休憩する。道の駅は「樹海ロード日高」という。バイクを降りて先を見ると、これから越えるだろう低い山にも雲がかかっている。

しかも、今進んでいる道が「樹海ロード」だということも心をなえさせる。樹海といえば森よりも森、森林の最上級的な響きがあり、これからの道のりの厳しさを感じさせる。その樹海ロードはまだ半分しか進んでいないのだ。
道の駅の建物の中には、道路に設置されたカメラからの映像が流されている。一応、通行可能なようだ。一服した後、出発することにする。
容赦なく雨は降り注ぐ。朝、TVで見た天気予報だと、今の時間が一番雨が激しいと言っていたたことを思い出す。最悪、転倒しないよう山の中の道をゆっくり進む。
どんどん上っていき、標高が高くなっていくのが、視界の変化でわかる。霧がかかってきているのだ。
とうとう視界が5mぐらいしかなくなった。この峠の最高地点、日勝峠の頂上付近に来たようだ。道路上のすべての車両が徐行して走行している。前を走るクルマは何とか見えるのだが、その前を走るクルマは霧の中に隠れて見えなくなっている状態。横をチラッと見ると一面真っ白な世界だ。
この日勝峠は急勾配で急カーブが続く。前を走るクルマが見えなくならない程度に適度な車間距離を開け、前走のクルマのストップランプに注意しながら走る。
今度は下りの道を慎重に慎重に走行する。次第に霧が薄くなっていくのが感じられるのが嬉しい。
ようやく道路の勾配が無くなって平地に辿りついたようだ。すると道東自動車道の十勝清水ICへ向かう標識が見えてくる。どちらに進むか迷う。このまま一般道を進むか高速道路を使うか。一般道を通れば時間がかかる。高速道路を使えば時間は短縮されるが、風があたって体力は消耗する。
一瞬、逡巡したあと、高速道路に進むことに決める。割り込み気味に右折車線に入り、信号待ちの後、右折して十勝清水ICのゲートへ向かう。
十勝清水ICのゲートでは行き先を聞かれる。料金先払い制なのだ。どこまで行くか決めていないし、まずここからどこまでいけるかも分からなかったので、適当に「帯広」と答えたが、どうやらそれでは満足した答えになっていないようだ。少しの間、沈黙した時間が流れた後、じれたようにゲートの人が「音更帯広ね」というので、良く聞こえなかったが「はい」と答えて、言われた料金を払う。
高速道路を走行してすぐに身体にあたる雨と風の厳しさを実感する。わかっていたことだが、やっぱりつらい。最初にあるPAに入ろうとすぐに決める。
あまりスピードを出さないよう気をつけて制限速度80km/h丁度で走る。それでもつらい。この道東自動車道は通行量が少なくて幸いした。ゆっくり走りながらも、あまり他のクルマにあおられたりすることが無い。
後にわかったことだが、この道東自動車道は通行量が少なくてあたりまえだ。現在、十勝平野の東西を結ぶ部分までしか伸びていないのだが、北海道の平野部は比較的一般道路が整備されている。東京と比べるとはるかに広い一般道では、地元の道民たちは「結構なスピード」で走行しているので、制限速度が80km/hの高速道路を使うはずが無い。
いつだったか某大臣が「道東自動車道は走っている車の数より、横切る熊の数のほうが多い」と発言して、北海道選出の全国的に有名な議員が怒り狂って謝罪させたことがあったくらいだ。

しばらく走って十勝平原SAの案内標識が見えたので安堵する。十勝平原SAの二輪用駐車場にとめる。こういうとき屋根付きなのはありがたい。
SAといえば中央自動車道や東名自動車道では売店や食堂、各種情報の案内、ガソリンスタンドがあるものだが、この十勝平原SAではトイレぐらいしか施設が無い。そういえば、この道東自動車道の入り口には、ガソリンスタンドがないからガソリンの残量に注意との看板があったのを思い出す。
トイレだけでもないよりはマシなので、トイレを利用させてもらう。一服した後、今晩どこに泊まるか決めることにする。さて、今日はどこまで進むか。
1案はこのまま雨の中を走っても楽しくない&つらいので帯広に一泊する。2案は阿寒湖まで進んで、阿寒湖畔温泉の旅館に泊まる。ガイドブックによると帯広にも温泉があるのだが、どれも高そうな旅館だ。それに対して阿寒湖畔温泉の旅館にいくつかリーズナブルな価格設定の旅館が見つかった。
そこでしばらく考え込んだが、まだ、12時を少し回ったばかりという時刻であったこともあり、結局、阿寒湖まで進むことに決め、阿寒湖畔温泉の旅館の一つに電話する。あっけなく予約を取ることができた。
本日の目的地が定まったところで、再出発する。
そういえば、音更帯広ICまでしか通行料金を払ってない。阿寒湖まで進むことに決めたからには、高速道路で池田ICまで行っておきたい。池田ICまで進んで後で追加料金を払うのが手間が無くてよかったが、このまま休憩無しに池田ICまで行くのもつらい。この道東自動車道には十勝平原SA以外のSAやPAが無いようなのだ。音更帯広ICで一旦高速道路を降りることにする。

音更帯広ICの無人のゲートを通って一般道に下りる。周囲には全く何も無い。畑だけが広がっている。何もないと、この雨の中では休憩することもできない。仕方なく地図を確認し、道東高速道路に戻ることにする。
無人のゲートを素通りする。無人なのはいいが、料金を払わなくていいのか?
あまり考えずに池田ICへ向かう。池田ICに近づくと、どうやら池田ICより先に高速道路が伸びているようだ。新規に開通したのかもしれない。このままどこに通じているか分からない高速道路を進むわけにも行かないので、池田ICで高速道路を降りる。
後に調べたところ、平成15年6月8日から池田ICより先の区間が開通しているようだ。また、既に開通していた音更帯広ICと池田ICの間に長流枝PAというのが開設している。

ここからは一般道を通って一路阿寒湖へ向かうことになる。国道242号を進み、途中ガソリンスタンドに立ち寄る。
ガソリンを満タンに補充した後、ガソリンスタンドの室内に入れさせてもらい、休憩させてもらう。ここでウェアを春夏用から秋冬用に着替える。よかった、秋冬用のウェアを持ってきておいて。
ガソリンスタンドを後にし、走り出して秋冬用のウェアの有り難みを実感する。体感温度が全く違う。雨はまだまだ降り続いている。

国道242号から国道241号へ。このまま241号線を進めば阿寒湖だ。空いている道路を淡々と進む。やはり景色が美しくない道路は退屈で苦痛だ。
阿寒湖に近づくにれ、徐々に雨が弱くなってきた。もう少しだが、疲れてきたので路肩で休憩する。すぐ近くに見える山々の麓が阿寒湖だろうかと想像する。

その後も国道241号をひた走り、ようやく阿寒湖についた。阿寒湖半温泉の温泉観光街をゆっくり進み、目的の旅館を発見。よかった、無事に到着することができた。
受付で手続きし、部屋へ入る。狭いが一人で過ごすには十分なスペースだ。部屋へ荷物を運び込み、着ているウェアを脱ぐ。雨はレインウェアより下には浸透してなかったが、ズボンの裾はびしょ濡れだ。バッグから替えのズボンに履き替えようとバッグを見ると、バッグの中には一部雨が染み込んで替えのズボンが濡れてしまっていた。
一応、バッグの中の荷物のほとんどはビニール袋で包んでいたが、ズボンだけは包んでいなかった。バッグもバイクに積んでいる際には上からレインカバーで包んでいたのだが、下のほうはあいている。バッグの一番下に入れていたズボンは、下から染み込んできた雨に濡れてしまったのだ。
仕方なく替えのほうのズボンを室内に干し、裾が濡れているズボンを続けて穿くことにした。
しばしの時間、室内でゆっくりしていたが、到着したのが午後4時ごろと早かったこともあり、表はまだ明るい。夕食の時間までもまだ時間があるので、阿寒湖半を散歩することにする。
阿寒湖半には一部で硫黄ガスや水蒸気が吹き出している「ボッケ」という泥火山がある。そこまで歩いていくことにした。
ボッケがあるところまで行くにはしばらく阿寒湖半の遊歩道を歩いていかなければならない。静かな阿寒湖半の湖面を見つつ、遊歩道を進む。

ボッケはボコッボコッと間隔をおいて地中から硫黄ガスが湧き出ている。湧き出ている瞬間を何とか写真におさめようと、何枚も写真をとるがなかなかうまい写真が撮れない。ようやく取れたのがこの写真だ。

くまなくボッケを観察した後、時間があったので遊歩道を戻る途中にあった阿寒湖畔エコミュージアムセンターに立ち寄る。
誰もいないセンター内は貸しきり状態だ。ゆっくり見てまわれる。すでに阿寒湖に来たことがあったので、アイヌコタンなどの観光っぽい場所に行きたいとは思わない。こういうあまり人が来ないような場所が丁度良い。

マリモや阿寒の自然の成り立ちが分かりやすく解説されていて興味深い。有名なマリモも勿論展示されている。

阿寒湖畔エコミュージアムセンターを出て、旅館に戻る途中に売店に立ち寄る。そこで「メロンラムネ」なるドリンクを発見。こういうジャンクっぽいものは、きっと不味いに決まっているのだが、見つけてしまった以上、試さなければなるまい。一つ購入する。

旅館に戻り夕食をとる。豪華ではないが安い割におかずの種類、量ともに多く、味もそこそこ。満足する。夕食後には風呂に入る。
風呂上りに問題のメロンラムネに挑むことにする。・・・期待(?)していたほど不味くはない。ただ、美味くもない。微妙だ。評価に苦しむ。
メロンラムネの評価を考えながら、明日のルートを地図で確認する。明日は天気予報によると晴れ。今日はつらい走行だったが、明日は摩周湖、屈斜路湖を周って知床に行く計画だ。ようやく道東エリアにも入れたこともあり期待が膨らむ。
